最近泣けた本。

といっても、フィクションではなく16区のケーキ屋さんの親方のお話です。

 

普段あまり甘い物は食べない家族なのですが(好みの問題で)、「16区のケーキだけは別物!」と母が言うので、先日久しぶりにお店へ伺いました。相変わらず活気のある店内と、バターとフルーツの良い香り。

喫茶室の空きを待ちながら、店内にあった本を何気なく手にとり、するすると引き込まれて結局買って帰りました。

 

あっという間に読んでしまったのは、ムッシュの誠実で真っ直ぐな素晴らしい人柄が胸を打ったから。

その半生は、家族に愛されて育まれた、優しい心と、物の哀れを純粋な目で見つめた幼少期の記憶、そして歯を食いしばって努力した学生時代、道を切り開く勇気や強運を掴む鋭さ。読んでいるだけで胸がいっぱいになりました。特に中盤は読みながら、何度も涙をおさえていました。

 

家族愛を強く感じたのは、お母様との台所での記憶。「この子が一番味がわかっている気がする」と言うお母様の感覚が愛情たっぷりで素敵。素人であっても料理を作る人は、食べた人にここに気付いて欲しい!と言う作り手なりのこだわりがあると思います。今日は食材の香りを生かして、出汁の取り方を工夫して、このカリカリ食感にこだわって、などなど。だからその思いに気づいてくれると凄く嬉しい。きっと、お母様の料理の味や香り、気配りのや段取りの記憶など、その全てがムッシュの身体に染み渡っているのだろうなと感じました。

私自身も、母の味の記憶や台所での姿が、今の私の大きな一部だと強く感じているので、とっても共感できました。

 

職人としての道のりは凄まじく、精神力や強い志や感謝の心と、感情てんこ盛りのストーリーでした。本の最後にルセット(レシピ)を公開してあるのですが、それが全てを物語っているように感じます。
一生懸命努力して何かを勝ち取った人の謙虚さは、本当に洗練されていて美しい。

16区のケーキと同じ。

 

その日、悶絶するほど美味しいムースカシスと言うケーキを頂いたのですが、本にも登場するそのこだわりたるや、頭の中を再びカシスの香りが漂いクラっとました。今度は、ギモーブも食べてみたいなぁ〜

読んで2度美味しい、と言うことで近々またお店に伺う口実ができました。