16. おばあちゃんの梅干し作り
おばあちゃんの漬けていた梅干し。
私の梅干しの思い出。
お弁当の中に入っていた、赤い梅汁に染まったミョウガ
風邪をひくと母が作ってくれた、梅昆布茶
種を割って食べる天神様
11月の香り
日の丸ごはん
…
梅の香りを感じて、つやつやの赤い実を想像しただけで、つばが出ます。
柔らかくふっくらとした実、口いっぱいにふわりと広がるすっぱ〜い、梅干し。
鼻に抜ける紫蘇の香りは、いつまでも幸せな余韻を残してくれます。
そう。梅干しは何と言っても、酸っぱい美味しさなのです。
今年も梅干しの出荷が始まりました。
三星舎の子寶の梅干しは、私の祖母のレシピで作った梅干しです。子供の頃から、11月になると会社の倉庫いっぱいに広がる梅干しの香りに食欲をそそられ、一粒二粒と思わず食べる量が増えてしまいます。
おばあちゃんの梅干し作り。
祖父母は、入院患者さんも家族も一緒に食事をして、大所帯の生活をしていた街の開業医でした。
梅干し作りは、私が生まれるずっと前に始まりました。
昔の開業医に嫁いだ祖母は、毎日の3度の食事に、掃除、洗濯、生活のお世話に看病と、看護婦さんやお手伝いさんと一緒に、とても忙しい毎日だったそうです。加えて6人の子供達の世話もあり、寝る間もなく働いていたそうです。
そんな中、食事には病気になった理由をよく考え、患者さんの生活の癖をよく観察し
「早食いにならないように、よく噛む硬いものや薄味のもの」
「消化を助けるため、唾液のよく出る酸っぱいもの」
「正しい食材の季節を教えてくれる、旬の食べ物」
「栄養のバランスや唾液のことを考え、砂糖を使わないこと」
など試行錯誤しながら毎日の食事の工夫をしました。
そこから生まれた祖母の知恵は、健康を創る食事「創健食」として調理の仕方〜レシピまで、我が家に受け継がれています。
特に梅干しは、病人に欠かせない特効薬の一つです。
うんと唾液を出して、消化器の調子を整えてくれます。私も子供の頃お腹を壊した時は、梅干しの種をいつまでも口の中で転がして唾液をうんと出しなさいと言われたのを、よく覚えています。
祖母は、消化器の弱い病人さんの観察から、唾液が出ていない人はお腹を壊しやすいという発見があったようです。
唾液の役割と、消化器の調子を崩しやすい人の観察についてはこちらをご覧ください。
〜10.食べるとは唾液を出すこと〜
おばあちゃんの梅干しは、家族や患者さんの健康を願って愛情込めて作っていました。父が子供の頃、家には大きな漬物部屋があり、梅干しだけでなく味噌を作ったりぬか床があったりしたそうです。
それぞれに沢山の思いを込めて、作っていたおばあちゃんの味。
当時のレシピをそのままに、子寶の梅干し作りは今も続いています。
毎年、この美味しい梅干しをお客様へお届けするのが私の楽しみです。
そしてお腹の調子が悪い時は、お薬代わりにうめぼしをゆっくり食べてみてください。
あら不思議、お腹がぐるぐると動き出しますよ。